2010年4月 のアーカイブ

実用的な村上春樹

2010年4月17日 土曜日

村上春樹も塩野七生と同じく、30代になって
読み始めたおそい読者です。

小説は全部は読んでないですね。
続編が出て話題になっている『1Q84』(新潮社、2009)以外に、
最初期の『風の歌をきけ』(講談社文庫)とか
『ダンス・ダンス・ダンス』(講談社文庫)も読んでないな。
たまたま古本屋で手に入らなかったのと、
ファンタジーが苦手なのが関係あるかもしれません。

小説で好きなのは短編「はちみつパイ」
(『神の子どもたちはみな踊る』所収(新潮文庫、2002。単行本は2000)。

好きなのは「村上朝日堂」シリーズと、
特設サイトで読者の質問に答える
『そうだ、村上さんに聞いてみよう』シリーズ。
あと新潮社から出た「少年カフカ」(これも読者の質問に答える方式)。
引越の時はそれだけ残しました。

(1)赤本、2000年、朝日新聞社

(2)青本、2006年3月、朝日新聞社

(3)緑本、2006年11月、朝日新聞社

『少年カフカ』(新潮社、2003)

文章について書いているので、それをご紹介。

―★―★―
 ときどき「どうしたらうまい文章が書けますか?」
という質問を受けるのですが、僕の答はひとつだけです。
とにかく何度でもいいから読み直し、書き直すこと。
これしかありません。プロだってアマチュアだって、
これは同じことですね。
 書き直すときには、書き直しと書き直しのあいだに
しかるべき時間を置くといいです。更にいえば、
一回の書き直しのときに、それぞれのテーマを設定すること
(たとえば今度は全体の文章をできるだけ短くしてやろうとか、
今度はできるだけ長くしてやろうとか)。
(『スメルジャコフ対織田信長家臣団』朝日新聞社、2001年、
 p.15 <村上ラジオ25>より )
これは村上朝日堂のCD-ROM版。
―★―★―

以下はわたしの意見。
野球の守備をよくするために千本ノックを受けるのと同じ。
ある程度数をこなせるようになったら、
初めて自分のレベルがわかり、
目標が立てやすくなります。
漠然と「作文うまくなりたい」でうまくいくわけない。

愛読していた雑誌あれこれ

2010年4月10日 土曜日

8日から仕事が始まって、最初の週末を迎えました。
ちょっとくたびれています。
荒削りなメモの延長ですが、どうぞ♪

―☆―☆―
最近はネットの時間に移管した気がするけど、
前は愛読していた雑誌があった。

「週刊朝日」(朝日新聞社発行の週刊誌)
母方の伯母が取っていたので、遊びに行くと読んだ。
ポルノ路線(笑)に走る前の
渡辺淳一『化粧』(1982年、朝日新聞社。
のち新潮文庫、講談社文庫、新潮文庫)が好きだった。
司馬遼太郎「街道をゆく」はときどき読んで、
文庫本になったら買って読むことにしていた。
村上春樹の「村上朝日堂」は文庫になってから古本で。
小説は熱心な読者ではないが、CD-ROM版
(「夢のサーフシティ」「スメルジャコフ対織田信長家臣団」)
と「村上さんに聞いてみよう」シリーズ3冊を愛読している。

「図書」(岩波書店のPR誌。月刊)
両親が岩波書店好きだったので、実家では今でも取っている。
岩波茂雄が小さな出版社を始めたころに
丁稚さんから編集者に起用され、
茂雄亡き後は経営にも携わった小林勇(1903-1981)に
20代のころ、凝っていた。
「図書」創刊者の1人であり、あとがきを書いていたこと
を知って、当時の「図書」をいろいろ読んだ。
学者の随筆が好きだが、
ここで見つけた学者が多い気がする。
中野好夫(英米文学)、高宮利行(中世英文学、書誌学、デジタル書物学)、
千野栄一(チェコ語)ほか

「銀座百点」(銀座の老舗商店会が発行するタウン誌の先駆け)
加盟店でもらえるので、ときどき読んでいた。
銀座が粋だったころの匂いを残す雑誌。
書く人の顔ぶれが豪華で、読み応えあり。
今、銀座は大きく変わってしまっているけど、
その雰囲気は残っているんだろうか。
向田邦子『父の詫び状』は大学生になって文庫本で読んだのだが、
初出は「銀座百点」だったという。
小田島雄志・村松友視などの鼎談がおもしろかった。

「オール讀物」(文藝春秋発行の、名前の通り読みものを掲載する老舗月刊誌)
30代以降、ときどき立ち読みしたり買った。
平岩弓枝『御宿かわせみ』
丸谷才一のエッセイのシリーズ。
神谷美恵子の義父になったかもしれない野村胡堂の『銭形平次捕物控』
藤沢周平はオール讀物新人賞で作家デビュー。
好きな著者しか読まない傾向があるので、
ふだん知らない作家を読むきっかけになる。
松井今朝子もこれで知った。

「東京人」(「ニューヨーカー」をお手本に作られた雑誌。現在は月間。都市出版発行)
丸谷才一のジャーナリズム批判シリーズを愛読。
向井敏が書評同人だった。
森まゆみの「望郷酒場」が好きだった。
散歩する参考にしたり、落語や飲み食い特集を購入。

「考える人」(新潮社発行の季刊誌。文学、音楽などを特集して取りあげる)
丸谷才一のインタビューやジュンパ・ラヒリの初訳などが
あれば買う。
ユニクロが1社スポンサー。

……最後になりますが、
いちおうわたしも女の子だった時期がありまして(笑)、
女性向きの雑誌で読んだことがあるのは、
アンアン、ノンノ、モアあたりです。

ヴァンダールワタナベだったかな、占いのコーナーが
けっこう好きでした(調べてみたら、ルネ・ヴァン・ダール)

ノンノは月2回発行だったのが月刊誌になるとか。
一時期よりは読者が戻っているそうですが、さてどうなるのでしょう。

野上弥生子が最後まで現役の作家だったわけ

2010年4月1日 木曜日

というのを、この間から考えてます。

「野上弥生子」で検索した結果はここをクリックしてください(アマゾン)。

数え年なら100歳まで(!)、
現役の作家を貫き通した、
この明治・大正・昭和を見届けた女性作家(1885-1985)
が若いころから気になっています。

まず
本人の気力・眼力が
尋常なものじゃなかったのはたしかですが、

*いいものはいい、だめなものはだめ、とはっきり言うこと
*若い作家(ことに女性)のいいところを発見すると、
 自分もそこから学ぼうと考える柔軟性
*お勉強好き(笑)でもわかるように好奇心がいつまでもあった
*自分をネタにできるユーモアの持ち主だった

そして、作家として何よりよかったのは、
*自分のペースでものを書けたこと
でしょうね。

頼まれ原稿もエッセイなんかはあったと思いますが、
小説は自分のペースで悠々堂々、
一人山ごもりして書いていた
という。

書くこと=食べることじゃなかった、
という恵まれた環境でもあったわけですけど。

松岡正剛が「千夜千冊」第934夜で取りあげてる野上弥生子
がとてもいい。

読んだり書いたり考えたりするのが
好きな女性には、とても刺激になるはず。

よく切れるペーパーナイフみたいな
野上弥生子の文章は、
慣れてないと取っつきにくいかも知れませんが、
文章のお手本のひとつになると思います。

最近、初めての本格的な評伝
狩野美智子『野上弥生子とその時代 』
が出たそうで、興味あります。
読んでおもしろかったら、感想書くかもしれません。