‘本が原作の映画’ カテゴリーのアーカイブ

学校を舞台にした小説2つ

2010年5月23日 日曜日

今年は学校で仕事しているので、
学校を舞台にした小説を2つ取りあげてみたいと思います。

まずは壺井栄『二十四の瞳』(新潮文庫、1952)。
最初に読んだのはいつかなあ。小学生か中学生か。

舞台になっている小豆島は
ジャズ歌手の伊藤君子さんのふるさとでもありますが、
まだ行く機会がないんですよね。
友達に言わせると、『二十四の瞳』の面影は
あんまりなくなってるよ、っていうことでしたが。

高峰秀子主演、木下恵介監督のモノクロ映画(1954)は
実家のある調布での映画祭でも、テレビ放送でも何回も観ています。
あれがすごく好きなので、あとから作られた田中裕子主演の
映画(1987)は観ていない。田中裕子は好きな女優ですけど。
田中裕子主演の方はVHSしかないみたいですね↓。

伊藤君子さんはたしかエキストラの子どもたちの1人だ
とライブの時言っていた気がします。年齢からすると
(あまり言っちゃまずいけど……)小学生のころですね。

今、ウィキペディアで出演者を確認して驚きました。

大石先生…高峰秀子
マスノ…月丘夢路
松江…井川邦子
早苗…小林トシ子
磯吉…田村高広
男先生…笠智衆
大石先生の母…夏川静江
男先生の妻…浦辺粂子
よろずや…清川虹子
飯屋のかみさん…浪花千栄子
校長先生…明石潮
大石先生の夫…天本英世
ちりりんや…高原駿雄
松江の父…小林十九二
小林先生…高橋とよ

戦争で失明してしまう磯吉が田村高廣だったんですね。
正和のお兄さん、阪東妻三郎の長男。

男先生が笠智衆だったのはなんとなく記憶にありました。
よろずやのおばさんは清川虹子かぁ。
「男先生の妻…浦辺粂子」これは覚えてない。
「大石先生の夫…天本英世」えっ、そうだったの。
マント着た不気味な怪人役が印象に残ってるんですが……

壺井栄の小説は新潮文庫にいくつも入っていたので、
いろいろ読んでいます。
『母のない子と子のない母と』(1952?)も好きな小説。

『二十四の瞳』は小学校ですが、
ジェームス・ヒルトン『チップス先生、さようなら』
(新潮文庫、菊池重三郎・訳。原書は1934)は中学高校生相手です。
イギリスの私立男子校パブリック・スクールが舞台。

チップス先生(本名はチッピングなんですが、あだ名は
チップス=じゃがいもを細長く切って揚げたもの。
フィッシュ&チップスはイギリスの名物料理の一つ)は
ラテン語の先生です。日本で言うと漢文の先生ですね。

わたしは子どものころに「ドリトル先生シリーズ」を愛読しまして、
それ以来イギリス人の生活に興味を持っているのですが、
『チップス先生~』はイギリス名物の一つ、
パブリックスクールの様子がよくわかるので、
たいへん面白かった。

岩波新書に『自由と規律』(1963)という本があるのですが、
著者の池田潔はパブリックスクールに学んだ経験のある人で、
その生活を紹介しています。
今だったら『モーリス』(1987)とかの映画でわかりますけど、
あのころはそんなに情報なかったですからね。

『チップス先生、さようなら』は2度映画になっているそうですが、
わたしはピーター・オトゥール主演のミュージカル(1969)を
観たことがあります。
オトゥールは背が高くてかっこいい。
「ヴィーナス」っていう
年取ってからの映画(2006)を観たいと思って
まだ果たせていません。

あ、有名な「アラビアのロレンス」(1962)も
観てないや。あれはスクリーンの方が良さそうですけど……

訳者の菊池重三郎(しげさぶろう、1901-1982)は
中学の先生から新潮社の編集者に転身し、
「芸術新潮」の初代編集長だったそうです。
英語の先生だったのでしょうかね。
今読むとやや古風な日本語なんですが、しゃれもうまく
訳してあって上手だと思います。
ペーパーバックも持っていますが、読み通したかな?(笑)

開設記念に「徹子の部屋」で語る

2010年3月18日 木曜日

♪ルールルルルル ルールルルルル ルールールール ルルッル…

徹子:みなさまこんにちは、徹子の部屋です。
   本日のお客様は、お小さいころから活字を読むのが大好きで、
   このたび本の紹介と感想のブログ「乱れ読み記」を開設され
   たぱぐさんです。
   きっかけやねらいをお訊きしたいと思います。

ぱぐ:こんにちは、この部屋には2回目の出演ですね。よろしくお
   願いします。

徹子:前回より顔色がよくなられたみたい。
   さて、今日のお召し物はグリーンと紺のチェック柄のフラン
   ネルシャツに、えんじ色のアーガイルセーター、グレーのパ
   ンツスタイル、黒いショーツブーツです。

ぱぐ:前回は少しよそ行きでしたが(笑)、今回は普段着でまいり
   ました。

徹子:パンツスタイルの方が、リラックスなさってる感じがします
   よ。

ぱぐ:自分を女だと意識したことがあまりなくって(笑)。10年
   も女子校に行ったんですが、中高の同級生に「おじさま」と
   いうあだ名を奉られたことがあります(笑)。

徹子:まぁ、「おじさま」!(爆)
   前から書いていらっしゃる「天衣無縫」というブログでも、
   <日記><食べたり呑んだり>の次に<読書>が多いそうで
   すが、改めて本のブログを作ろうと思われたのは?

ぱぐ:「天衣無縫」はまず、文章稽古のために作ったブログですの
   で、ネタは何でもありなんです。本のことも出てきますが、
   だいたいは日記の中でちらっと触れている程度。
   うちのダンナはパソコンソフトの開発をやっている技術者で、
   設定などはおまかせなんですが、前から「書評ブログを作っ
   てみたらどうなの?」と言われていたんですよ。

徹子:ご主人のお勧めということですか。

ぱぐ:直接はそうですね。
   書くのも好きなので、じゃあ思い切ってやってみようかな、
   と。書評だと大げさだから、本の紹介と感想のブログにしま
   した。

徹子:もともと書評を読むのがお好きだったそうですね。

ぱぐ:目についた本を買ったり借りたりすることもありますが、書
   評を読んで面白そうだと思った本は手帳にメモしておいて、
   手に入れることにしています。

徹子:特にお好きな書評はありますか?

ぱぐ:ひとつの字数がたっぷりあって、書評委員があまり変わらな
   い、毎日新聞の書評欄(今週の本棚)は毎週楽しみにしてます。
   
   個人名を挙げると、2002年に亡くなった<書評の名手>向井
   敏(さとし)さんや、40年も(!)書評を手がけておられる
   丸谷才一さん、それに英米文学専攻の学者で小説を読むのが
   大好きな若島正さんの書評は手に入る限り読んでます。

*若島正『殺しの時間―乱視読者のミステリ散歩―』(2006、バジリコ)

徹子:なぜか男の方ばかりですねえ。何か琴線に触れるところがお
   ありですか?

ぱぐ:司馬遼太郎や中島敦も好きだったりするので、男性的な?文
   章が好みなのかなぁ。
   女性でも幸田文とか向田邦子、最近の人なら米原万里など、
   歯切れのいい文章が好みです。

徹子:書評は文章の書き方のお手本にもなるとか。

ぱぐ:そうですね。いかに読者を読みたい気持にさせるか、文章の
   芸が見せどころです。
   「天衣無縫」を書くときの参考にもなっていると思いますよ。
   ネットでオープンに書いているということは、大げさに言え
   ば世界中の方が読む可能性があるっていうことですよね。

徹子:全世界相手のブログですか(笑)。

ぱぐ:ふだんはそこまで意識しないで、書きたいように書いてます
   けど(笑)。

徹子:ぱぐさんは新しい本にはあまり手が伸びないということです
   が、書評で知って読みはじめた本はありますか?

ぱぐ:インド系のアメリカ人女性作家、ジュンパ・ラヒリの短編集
   『停電の夜に』(新潮文庫)は、向井敏さんの書評<低声
   (こごえ)で語る人生のさまざま>で知ったんだと思います。
   旅のお供にも本は欠かせませんが、近江への一人旅で瀬田に
   泊まったとき、読むものがなくなって町の本屋に入ったんで
   すよ。さんざん迷ってから「そういえば、これ書評で見たなぁ」
   と思って買いました。

*向井敏『背たけにあわせて本を読む』(2002、文藝春秋)
*ジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』
 (小川高義・訳、2000、新潮文庫。米国での原著刊行は1999)

徹子:実際に読んでみていかがでした?

ぱぐ:シングルルームのバスタブに浸かりながら読んだのを今でも
   覚えていますが、みっけものをした気分でした。ラヒリの小
   説はごはんがおいしそうなんですけど、細部の描写が行き届
   いています。
   それからお気に入りになって、第2作の長編『その名にちな
   んで』(新潮文庫)、第3作の短編集『見知らぬ場所』(新
   潮クレストブックス)と今まで出たものはみんな読んでます。

*ジュンパ・ラヒリ『その名にちなんで』
 (小川高義・訳、2007、新潮文庫。米国での原著刊行は2003)

*ジュンパ・ラヒリ『見知らぬ場所』
 (小川高義・訳、2008、新潮クレストブックス。米国での原著刊行も2008)

徹子:『その名にちなんで』は映画もご覧になったとか。

ぱぐ:ミーラー・ナーイルという女性監督の作品です。本だと想像
   するしかない、カルカッタの風俗が映像でわかっておもしろ
   かったですね。

*映画DVD『その名にちなんで』(2006、米国。日本での公開は2007。DVD発売は2008)

   あと、ほんとうは原文でも読めるといいんですが、日本語以
   外は不得手なので、翻訳者の腕にも注意してます。へんな文
   章だと内容に関係なく腹が立ってきて、読めなくなるので。
   ラヒリの翻訳は小川高義さんという方が手掛けていらっしゃる
   んですが、とても読みやすい。

徹子:本の話になると、ぱぐさんの目が輝きますね(笑)。ほんとう
   にお好きなんだということがわかりました。

ぱぐ:丸谷才一さんが「文章の名手が大好きなものについて書けばよ
   い随筆集ができる」と書いていらっしゃるんですよ。
   文章についてはまだ修行中(笑)ですけど、もともと小説より
   はエッセイが好きなので、数をこなしていくうちに手応えを感
   じられたら、何よりです。

*丸谷才一『蝶々は誰からの手紙』(2008、マガジンハウス)

   あと、読者のみなさんと本についておしゃべりする場になるの
   も楽しみにしています。

徹子:どんなものができるのか楽しみにさせていただきます。
   今日はありがとうございました。

ぱぐ:こちらこそ、長々と失礼いたしました。