‘伝記・自伝’ カテゴリーのアーカイブ

新潮文庫の100冊

2010年7月11日 日曜日

お久しぶりです。
前回の更新から2ヶ月くらい経ってしまいました。

夏休み前の今ごろ、各文庫から○○文庫の百冊、というのが出ますね。
新潮文庫が始めたのかなあ、あれ。

中高のころ、本屋から「新潮文庫の100冊」の小冊子をもらってきて、
よく眺めていました。
もともと、わたしは新潮文庫のデザインが好きで、
各文庫から同じものが出ていたら新潮文庫にすることが多いのです。
たぶんうちにある文庫本も新潮がいちばん多いんじゃないかな。

新潮社はもともと「新潮」という文芸雑誌から始まった出版社なので、
文芸ものに定評があります。
装幀室という、装幀の専門家(デザイナーですね)を
雇う専門部署があるのもめずらしい。

文庫のキャラクターであるYonda?パンダが好きで、
ピンバッジと文庫本カバーをもらったことがあります。
次はマグカップを狙っている。20冊でもらえるんだったかな。

今年の100冊キャンペーンは
<新潮文庫の100冊からどれでも2冊買うと
 Yonda?のバンダナ「ヨンダナ」がもらえます>

というもの。種類は6つ。どれが当たるかはお楽しみ。

コレクターの方、もし全部集めたかったら
<6口をまとめて応募してくだされば、
 ちゃんと6種類が届きます。
 バラバラにではなく、6口まとめて、でお願いします!>
とツイッターで告知してましたのでお試しを。
小冊子についているはがきだと2口までしか応募できないので、
3口以上応募する場合は官製はがきで。

今年残念なのは、中島敦が100冊からはずされてしまったこと!
司馬遼太郎『燃えよ剣』は相変わらず入ってますが。
わたしはこれで中学生の時、司馬遼太郎にはまったのでなつかしい。

特製カバー10冊というのがあるのですが、
三島由紀夫『金閣寺』が金色なのが笑えます。
川端康成の『雪国』は銀。

どーんと100冊(セットで110冊)大人買いもできます。
57,316円なり。これ110冊全部足した値段なのかな。
すこし割引もあり??

ちなみにわたしが新潮文庫で読んだもの。
 壺井栄、司馬遼太郎、塩野七生、村上春樹、丸谷才一、宮沢賢治、夏目漱石、北原白秋、堀内大學、森鴎外、向田邦子、太田和彦、野上弥生子、チップス先生さようなら、ジェフェリー・アーチャー、ジュンパ・ラヒリ、ジェーン・オースティン『自負と偏見』、チャップリン自伝、シャーロック・ホームズ(延原謙の訳はいいですよ)、O・ヘンリー短編集など。

野上弥生子が最後まで現役の作家だったわけ

2010年4月1日 木曜日

というのを、この間から考えてます。

「野上弥生子」で検索した結果はここをクリックしてください(アマゾン)。

数え年なら100歳まで(!)、
現役の作家を貫き通した、
この明治・大正・昭和を見届けた女性作家(1885-1985)
が若いころから気になっています。

まず
本人の気力・眼力が
尋常なものじゃなかったのはたしかですが、

*いいものはいい、だめなものはだめ、とはっきり言うこと
*若い作家(ことに女性)のいいところを発見すると、
 自分もそこから学ぼうと考える柔軟性
*お勉強好き(笑)でもわかるように好奇心がいつまでもあった
*自分をネタにできるユーモアの持ち主だった

そして、作家として何よりよかったのは、
*自分のペースでものを書けたこと
でしょうね。

頼まれ原稿もエッセイなんかはあったと思いますが、
小説は自分のペースで悠々堂々、
一人山ごもりして書いていた
という。

書くこと=食べることじゃなかった、
という恵まれた環境でもあったわけですけど。

松岡正剛が「千夜千冊」第934夜で取りあげてる野上弥生子
がとてもいい。

読んだり書いたり考えたりするのが
好きな女性には、とても刺激になるはず。

よく切れるペーパーナイフみたいな
野上弥生子の文章は、
慣れてないと取っつきにくいかも知れませんが、
文章のお手本のひとつになると思います。

最近、初めての本格的な評伝
狩野美智子『野上弥生子とその時代 』
が出たそうで、興味あります。
読んでおもしろかったら、感想書くかもしれません。

18世紀西欧文化の申し子

2010年3月21日 日曜日

池内紀<おさむ>『モーツァルト考』(講談社学術文庫、1996)

モーツァルト(1756-1791)の人物像っていうと、
映画「アマデウス」が印象に残っている人が多いのかな。
あれは確かに傑作ですけど(音楽の使い方もね)、
「年取ったサリエリが回想するモーツァルト」
ですからね。

秀才が天才に抱く嫉妬、
すごさはわかるけど自分はできないという引け目、
見方がかなり歪んでますから。

「モーツァルトってあんな下品な人だったんだ~」
で終わっちゃ、ものの見方が浅い。
それ、自分に引きつけて考えてるでしょう?
安心してどうしますよ(笑)。

親しい従姉妹に出した手紙などが残ったので、
お下品なところがあったのはよく知られていますが、
ここまで強調するんかい?
とわたしはちょっと不満でした。

天才的な創作者(モーツァルトの場合は音楽)は
自分の天分を発揮するために生涯を捧げる。
<作り出すものの価値がすばらしい>
ってことが何より大切で、
人物像は二の次三の次。

といいながら、時代の子としての
モーツァルトは気になる。

「アマデウス」を観る前から、
モーツァルトは
<人生を愉しんで生きた人>
だと思っていて、そこが好きでした。

彼の生きた時代は18世紀、
フランス革命以後、
西欧社会が二度も三度もひっくり返る前の、
ゆるやかな優雅さがあった。

英国の女性小説家、
ジェーン・オースティン(1775-1817)
もほぼ同じころですよね。

というわけで、
18世紀の西欧はどういう時代だったのか、
そしてモーツァルトが18世紀西欧文化の申し子
であることを教えてくれるのが、この本です。

池内紀はドイツ文学の学者だった人で、
現在は物書き業に精を出してます。
エッセイを山ほど書いてますし、
(読んでないけど)カフカやゲーテなど翻訳もありますね。
NHKーFM「日曜喫茶室」(はかま満緒司会)にもよく出ていた。
(そういえばあの時間帯、最近は松尾貴史の
「トーキング ウィズ 松尾堂」がほとんどでつまらないなー。)

読みやすい文章に定評がありますが、
この本では編集部相手に資料やメモを見ずに
語りおろしているのでお話を聴いているみたい
に読めます。

第一章 時代の申し子、時代の頂点
第二章 「小さな大人」の旅の日々
第三章 手紙の中の天才
第六章 死の一年

次の二章はビデオ鑑賞合宿で練り上げた
対話方式になっています。

第四章 ウィーンとフリーメイソン
第五章 オペラの魅惑

なお、同じ著者にモーツァルトの故郷を書いた
『ザルツブルグ』(ちくま文庫、1996。
元本は1988、音楽之友社より刊行)
という本が
あります。興味のある方は併せてどうぞ。