新潮文庫の100冊

2010年7月11日
Filed under: エッセイ,ジュンパ・ラヒリ,中島敦,丸谷才一,伝記・自伝,司馬遼太郎,向田邦子,塩野七生,壺井栄,太田和彦,小説,文庫について,新潮社,村上春樹,翻訳の文章と翻訳者について,野上弥生子 — ぱぐ @ 00:18

お久しぶりです。
前回の更新から2ヶ月くらい経ってしまいました。

夏休み前の今ごろ、各文庫から○○文庫の百冊、というのが出ますね。
新潮文庫が始めたのかなあ、あれ。

中高のころ、本屋から「新潮文庫の100冊」の小冊子をもらってきて、
よく眺めていました。
もともと、わたしは新潮文庫のデザインが好きで、
各文庫から同じものが出ていたら新潮文庫にすることが多いのです。
たぶんうちにある文庫本も新潮がいちばん多いんじゃないかな。

新潮社はもともと「新潮」という文芸雑誌から始まった出版社なので、
文芸ものに定評があります。
装幀室という、装幀の専門家(デザイナーですね)を
雇う専門部署があるのもめずらしい。

文庫のキャラクターであるYonda?パンダが好きで、
ピンバッジと文庫本カバーをもらったことがあります。
次はマグカップを狙っている。20冊でもらえるんだったかな。

今年の100冊キャンペーンは
<新潮文庫の100冊からどれでも2冊買うと
 Yonda?のバンダナ「ヨンダナ」がもらえます>

というもの。種類は6つ。どれが当たるかはお楽しみ。

コレクターの方、もし全部集めたかったら
<6口をまとめて応募してくだされば、
 ちゃんと6種類が届きます。
 バラバラにではなく、6口まとめて、でお願いします!>
とツイッターで告知してましたのでお試しを。
小冊子についているはがきだと2口までしか応募できないので、
3口以上応募する場合は官製はがきで。

今年残念なのは、中島敦が100冊からはずされてしまったこと!
司馬遼太郎『燃えよ剣』は相変わらず入ってますが。
わたしはこれで中学生の時、司馬遼太郎にはまったのでなつかしい。

特製カバー10冊というのがあるのですが、
三島由紀夫『金閣寺』が金色なのが笑えます。
川端康成の『雪国』は銀。

どーんと100冊(セットで110冊)大人買いもできます。
57,316円なり。これ110冊全部足した値段なのかな。
すこし割引もあり??

ちなみにわたしが新潮文庫で読んだもの。
 壺井栄、司馬遼太郎、塩野七生、村上春樹、丸谷才一、宮沢賢治、夏目漱石、北原白秋、堀内大學、森鴎外、向田邦子、太田和彦、野上弥生子、チップス先生さようなら、ジェフェリー・アーチャー、ジュンパ・ラヒリ、ジェーン・オースティン『自負と偏見』、チャップリン自伝、シャーロック・ホームズ(延原謙の訳はいいですよ)、O・ヘンリー短編集など。

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学校を舞台にした小説2つ

2010年5月23日
Filed under: なつかしの児童文学,壺井栄,小説,岩波書店,文庫について,新潮社,映画,本が原作の映画,翻訳の文章と翻訳者について — ぱぐ @ 07:23

今年は学校で仕事しているので、
学校を舞台にした小説を2つ取りあげてみたいと思います。

まずは壺井栄『二十四の瞳』(新潮文庫、1952)。
最初に読んだのはいつかなあ。小学生か中学生か。

舞台になっている小豆島は
ジャズ歌手の伊藤君子さんのふるさとでもありますが、
まだ行く機会がないんですよね。
友達に言わせると、『二十四の瞳』の面影は
あんまりなくなってるよ、っていうことでしたが。

高峰秀子主演、木下恵介監督のモノクロ映画(1954)は
実家のある調布での映画祭でも、テレビ放送でも何回も観ています。
あれがすごく好きなので、あとから作られた田中裕子主演の
映画(1987)は観ていない。田中裕子は好きな女優ですけど。
田中裕子主演の方はVHSしかないみたいですね↓。

伊藤君子さんはたしかエキストラの子どもたちの1人だ
とライブの時言っていた気がします。年齢からすると
(あまり言っちゃまずいけど……)小学生のころですね。

今、ウィキペディアで出演者を確認して驚きました。

大石先生…高峰秀子
マスノ…月丘夢路
松江…井川邦子
早苗…小林トシ子
磯吉…田村高広
男先生…笠智衆
大石先生の母…夏川静江
男先生の妻…浦辺粂子
よろずや…清川虹子
飯屋のかみさん…浪花千栄子
校長先生…明石潮
大石先生の夫…天本英世
ちりりんや…高原駿雄
松江の父…小林十九二
小林先生…高橋とよ

戦争で失明してしまう磯吉が田村高廣だったんですね。
正和のお兄さん、阪東妻三郎の長男。

男先生が笠智衆だったのはなんとなく記憶にありました。
よろずやのおばさんは清川虹子かぁ。
「男先生の妻…浦辺粂子」これは覚えてない。
「大石先生の夫…天本英世」えっ、そうだったの。
マント着た不気味な怪人役が印象に残ってるんですが……

壺井栄の小説は新潮文庫にいくつも入っていたので、
いろいろ読んでいます。
『母のない子と子のない母と』(1952?)も好きな小説。

『二十四の瞳』は小学校ですが、
ジェームス・ヒルトン『チップス先生、さようなら』
(新潮文庫、菊池重三郎・訳。原書は1934)は中学高校生相手です。
イギリスの私立男子校パブリック・スクールが舞台。

チップス先生(本名はチッピングなんですが、あだ名は
チップス=じゃがいもを細長く切って揚げたもの。
フィッシュ&チップスはイギリスの名物料理の一つ)は
ラテン語の先生です。日本で言うと漢文の先生ですね。

わたしは子どものころに「ドリトル先生シリーズ」を愛読しまして、
それ以来イギリス人の生活に興味を持っているのですが、
『チップス先生~』はイギリス名物の一つ、
パブリックスクールの様子がよくわかるので、
たいへん面白かった。

岩波新書に『自由と規律』(1963)という本があるのですが、
著者の池田潔はパブリックスクールに学んだ経験のある人で、
その生活を紹介しています。
今だったら『モーリス』(1987)とかの映画でわかりますけど、
あのころはそんなに情報なかったですからね。

『チップス先生、さようなら』は2度映画になっているそうですが、
わたしはピーター・オトゥール主演のミュージカル(1969)を
観たことがあります。
オトゥールは背が高くてかっこいい。
「ヴィーナス」っていう
年取ってからの映画(2006)を観たいと思って
まだ果たせていません。

あ、有名な「アラビアのロレンス」(1962)も
観てないや。あれはスクリーンの方が良さそうですけど……

訳者の菊池重三郎(しげさぶろう、1901-1982)は
中学の先生から新潮社の編集者に転身し、
「芸術新潮」の初代編集長だったそうです。
英語の先生だったのでしょうかね。
今読むとやや古風な日本語なんですが、しゃれもうまく
訳してあって上手だと思います。
ペーパーバックも持っていますが、読み通したかな?(笑)

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本とごはんについて「徹子の部屋」で語る(2)

2010年5月5日
Filed under: 「徹子の部屋」で語る,向田邦子,料理の本 — ぱぐ @ 10:57

徹子:さて、本の話ばかりになりましたが、今度はごはんの話題に行きましょ
   うか。

ぱぐ:母の母、わたしの祖母ですが、この人は喜多方郊外の農家出身で、東
   京に出てきてから結婚して商売をやっていたそうですが、貧乏でずっ
   と苦労してるんですね。
   関東大震災とか戦争で疎開とか、いろいろあのころみんな苦労したわ
   けですが、そういう中でもこどもたちにはひもじい思いをさせないよ
   うにしていた、と母から聞いています。
   わたしが産まれる前に祖父は亡くなってるんですけど、どうも商売は
   うまい方じゃなかったみたいだし、振れ幅の激しい人で祖母はだいぶ
   大変だったようです。

徹子:そういう影響でぱぐさんのお母様もごはん作りには熱心でいらしたと
   か。

ぱぐ:伯母から聴くと、こどものころは別に台所の手伝いなんかしてなかっ
   たって言うんですけど(笑)、まあとにかくA型の典型みたいな懸命
   にやるタイプだから、熱心になったんじゃないかなあ。作りすぎて文
   句が出てたくらいだから(笑)。

徹子:ぱぐさんは食べる方はお好きですが、作る方は苦手でいらっしゃると
   か。

ぱぐ:料理学校とかも行きましたけど、とにかく要領悪いですからね、結婚
   してから毎日ごはんを作るのがこんなに大変だとは思いませんでした
   よ(笑)。わたしずっと親元で育って一人暮らししたことなかったの
   で。

徹子:ご主人からダメ出しが出るんだそうですね(笑)。

ぱぐ:そうなんですよ。中華鍋はすぐ洗わないとさびちゃうんだとか、焼肉
   をホットプレートで焼いたらなんだその順番はとか、うるさいので。
   この間なんか食べながらけんかしてました(笑)。

   こどものころはごはん炊く係だったとかいうし、ひとり暮らしが長く
   て外食が多かったみたいですけど、たぶんダンナの方が腕前は上です
   (笑)。要領はいいから。

   家で仕事するようになってからお昼は自分で作ってますけど、夕飯だ
   けはわたしが作る約束です。でも小学生男子みたいに一日何回も
   「今日の夕飯は何なの?」って訊かないでほしい(笑)。

   うまいとも言いませんがまずいとも言わないから、わたしの料理の腕
   前はかなり評価低いんじゃないかな(笑)。てきとうに作ると変な味
   になるので、いちおう今でも料理の本を見ながら作ってますよ(笑)。

徹子:外食すると、自分の食べた分を払うんだそうですね。

ぱぐ:そうなんですよ。今年は残業のない仕事で早くあがれるから余裕があ
   りますが、肉体労働で残業が入っちゃうと、それでなくても苦手な料
   理を作る気力なんか涌かないじゃないですか。で、外食にすると、ちゃ
   んと食べた分払わなきゃいけないので、金銭的にはとてもイタイです。

   今はフトコロに余裕がないからずっとうちで夕飯食べてますが、たま
   には外食したいですよね。わたしは大して呑めないので、呑み屋に行っ
   ても食べる方が主です。

徹子:お料理の本はどんなものをお持ちですか?

ぱぐ:料理教室に通っていたベターホーム協会の本と、母のオススメの婦人
   の友社
の「毎日のお総菜シリーズ」、伯母からもらった『NHKきょう
   の料理 秘伝おかずづくり』を見ることがいちばん多いかな。

   あとは『向田邦子の手料理』、きょうの料理シリーズの『松本忠子
   <あつこ>のもう困らない今夜のおかず』とか。

   前に主婦としても大ベテランの年上の友達が遊びに来たとき、
   「ぱぐさん、婦人の友の本を持ってるんですねえ」
   ってチェックされちゃったことがあります(笑)。

徹子:向田さんの妹さんがやっていた「ままや」に行かれたことがあるそう
   ですね。

ぱぐ:そうそう、最初に勤めていた団体職員だったころですね。派遣で来て
   いた数字キーを打つのがものすごく早い女の子を誘って行ったことが
   ありましたけど、あの人どうしてるかなあ。仕事がとてもできるんで
   職場じゃ評価高くてけっこう長くいてもらったんですよ。
   「ままや」のごはん、おいしかったですよ。

徹子:あと、ご主人が節約メニューの本を買ったとか。

ぱぐ:「ひと月8000円でできる節約おかず」とかいうような本ですね。

   今はもやしメニューだけの本とかあるそうだし、コールセンターに
   勤めていた時の年下のひとり暮らしの人たちは「きょうのお弁当は
   ○百円でできた」とか言ってたから、うわ大変だなと思いましたよ。
   派遣って基本交通費なしだし、契約更新されるかどうか不安ですから
   ね。無理して体調崩す人多いんです。みんな元気だろうか。

徹子:今年は学校でのお仕事ということで、給食を召し上がっているそうで
   すね。

ぱぐ:そうなんですよ。これがなんといっても楽しみでねえ(笑)。今の給
   食は格段においしくなってますね。先割れスプーンなんか使わないし、
   陶器の入れ物だし。
   大人たちも配膳をわいわい言いながらやってます。お膳の上の順番は
   これだ、とかチェックする人がいて、団体職員の時のこと思い出しま
   したよ。お弁当付きの会議がけっこうあって、その配膳を事務局とし
   てやったので。わたしは不器用だし接客とかぜったい向かないと思っ
   ていたのでウェイトレスみたいなアルバイトはやったことなかったん
   ですけど、仕事でやらざるを得なくなりましてね。
   わたしがコーヒーをお盆に載せて持って行くと、会議に出ている事務
   局のエライおじさんが横目で心配そうに見てました(笑)。

徹子:まだまだお話は尽きないんですけど、次回にまた伺うことにいたしま
   しょう。今日はありがとうございました。

ぱぐ:またつい長々おしゃべりしちゃいましたね。楽しかった。
   ありがとうございました。

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本とごはんについて「徹子の部屋」で語る(1)

2010年5月4日
Filed under: 「徹子の部屋」で語る,エッセイ,中央公論,古典を含む詩歌について,向田邦子,土田正鎮,岩波書店,日本の古典文学を知るために,福音館,角川書店 — ぱぐ @ 07:38

♪ルールルルルル ルールルルルル ルールールール ルルッル…

徹子:みなさまこんにちは、徹子の部屋です。本日のお客様は黄金週間中
   のぱぐさんです。4月からのお仕事が一段落してゆっくりお休み中
   だそうですが、今日はまったりと<本とごはんについて>語ってい
   ただきたいと思います。

ぱぐ:こんにちは、よろしくお願いします。
   先日のスペシャル、拝見しましたよ。浅田姉妹と辻井くんのが好き
   でダンナと楽しんで見ていました。

徹子:ありがとうございます。いつものこの部屋を出ての番組、たのしかっ
   たわ。
   さて今日のぱぐさんのお召し物は、マドラスチェックの半袖開襟シャ
   ツに麻の生成りのスカート、黒いスパッツですね。靴はひも付きの黒
   い革靴です。

ぱぐ:季節感で言えばサンダルなんかでもいいんでしょうけど、今持ってい
   ないものですから、いつもの革靴にしちゃいました。

徹子:さて、ぱぐさんは本とごはんが贅沢なご家庭でお育ちになったとか。

ぱぐ:そうなんですよ。こどものころって自分のうちが基準みたいなところ
   あるじゃないですか。だから当たり前だと思ってたんですけど、大き
   くなったらそうじゃないんだってことがわかってきました。
   うちは両親とも昭和ひとけた生まれで、貧乏な中育ったものですから、
   ごはんをたくさん食べることと、本を好きなように読みたい、という
   のが熱烈な願いだったらしくて、それが家庭を持ってから実現したら
   しいんですね。

徹子:お父さまは信州の農家出身、お母さまは東京の商家出身ですね。

ぱぐ:そうです。父は昔の文学青年なんですけど、貧乏な農家で本を読むの
   なんか贅沢だったので、勤め人になってからは自分の読みたい本を買
   うのが一番の楽しみだったらしく、団地住まいだったのに押入の中と
   か本でいっぱいでした。本棚に入りきらない分が押入に入ってたらし
   くて(笑)。

徹子:そういう本がたくさんある中で育ったことが、今のぱぐさんを作った
   大きな要因だそうですね。

ぱぐ:わたしも父と同じく、本を読んでいれば満足、というところありまし
   たからね。かなり早くから字は読めたと思いますし、母がまた教育熱
   心でうちの児童書は福音館と岩波だったので、いい本を読む環境だっ
   たという。それも当たり前だと思ってたんですけど、同世代と話すと、
   「すごいね、それ」ってなんか引かれちゃうんですよね(笑)。
   
   わたし、いわさきちひろを知ったのは徹子さんの『隣のトットちゃん』
   を高1の時、担任の先生(体育)がホームルームで話して
   「借りたい人がいたらどうぞ」
   と言ったので、はい!って真っ先に借りてからなんです。
   学生時代、上井草のちひろ美術館によく行きましたよ。友の会の会員
   にもなっていましたし。

徹子:まあそうですか。わたくしの本がきっかけだったとは。ありがとうご
   ざいます。

ぱぐ:「もっと早くちひろを知りたかった」
   と母に言ったら、自分の選んだものに自信があったからか、ショック
   受けてましたよ(笑)。

徹子:大学で国文科に進んで、古典を専攻したのも家にあった本が影響して
   いるとか。

ぱぐ:そうですね。父も国文出てるんですけど、卒論は近代詩の方だったと
   思います。はっきり答えてくれなかったので何を題材にしたか知りま
   せんけど。
   わたしが古典好きになったのは、中学高校の時の学年主任の先生がお
   もしろい授業をなさる方で、その授業に魅せられてからですね。

徹子:女子の一貫校ですよね。

ぱぐ:そうです。2歳半下の弟が付属小学校に入学することになって、きょ
   うだい同じ学校の方がよかろうというわけで、わたしは4年から編入
   したんですけど、中学高校の6年間がいちばんいろんな影響受けてま
   すね。
   その学年主任の先生みたいな授業ができたらいいなあ、と思って、中
   学高校の教員免許を取りました。教職に就いたことはないんですけど。
   あ、今年は某学校で先生方のお手伝いの仕事をしています。

徹子:おうちにあった古典の本というと、どんなものですか?

ぱぐ:岩波の旧古典文学大系が、全部じゃないと思いますけどかなりありま
   した。わたしが面白がって読んだのは川柳と近松門左衛門、大鏡、平
   家物語あたりかな。あと、枕草子を学校で習った時は全文が載ってい
   る本を買ってきて父が講読してくれたんですけど、教え方がこわすぎ
   て(笑)、一緒にやってもらうのがいやだったという(笑)。

徹子:お嬢さんに対してかなり厳しかったんですか。

ぱぐ:そうなんですよね。わたし要領が悪くてしょちゅう「馬鹿」とか「間
   抜け」とか言われましたし、小さいころはぶん殴られましたからね。
   向田邦子さんの『父の詫び状』を初めて読んだ時、なんだうちと同じ
   じゃん、と共感を持ったという(笑)。

徹子:ほかにはどんな本がありましたか?

ぱぐ:あと、角川の日本史辞典という小さいながら中身の詰まった辞典があ
   りまして、それを父が新しいのが出るたびに買っていたので、勝手に
   使わせてもらいましたし、今も自分で持ってます。

徹子:専攻されたのは国文ですが、日本史にしようか迷われたとか。

ぱぐ:そうですね。中央公論から出たむかしの『世界の歴史』『日本の歴史』
   が好きで(これもうちにあったんですが)、ずいぶん読みましたから。
   『日本の歴史』の第5巻、土田正鎮(まさしげ)さんの「王朝の貴族」
   は名文だしおもしろくて、いいな史料編纂所で仕事するのなんかおも
   しろいだそうな、と思っていましたよ。

徹子:土田正鎮さんは東大の史料編纂所の所長から佐倉にある国立歴史博物
   館の館長になった方ですね。

ぱぐ:そうです。お兄さんがピース缶爆弾事件で奥さんを亡くした警視庁に
   お勤めだった土田國保さんです。徹子さんならご存じでしょう。わた
   しはこどものころですから、あとで知ったんですけど。

徹子:覚えてますよ。国文になさったのは恩師のひと言が決め手だったそう
   ですね。

ぱぐ:わたしが行った大学は2年生の時に専攻を選ぶので、日本史にもかな
   り心が動いたんですけど、母校に行ってさっきの学年主任の先生に相
   談したら、
   「あなたは文学よ」
   と言われたので、まあ先生が言うならそうなのかな、と思って国文に
   しました。先生ご自身は国文の方と日本史と両方勉強なさったんじゃ
   なかったかな。雑談ばかりしてるみたいでしたけど、ちゃんと授業は
   進行してましたよ。どういうものを題材にするかは自分で決めて印刷
   したものを配っていたし。ああいう名人芸はほかで見たことないです。

(つづく)

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実用的な村上春樹

2010年4月17日
Filed under: エッセイ,小説,文章について,村上春樹 — ぱぐ @ 10:56

村上春樹も塩野七生と同じく、30代になって
読み始めたおそい読者です。

小説は全部は読んでないですね。
続編が出て話題になっている『1Q84』(新潮社、2009)以外に、
最初期の『風の歌をきけ』(講談社文庫)とか
『ダンス・ダンス・ダンス』(講談社文庫)も読んでないな。
たまたま古本屋で手に入らなかったのと、
ファンタジーが苦手なのが関係あるかもしれません。

小説で好きなのは短編「はちみつパイ」
(『神の子どもたちはみな踊る』所収(新潮文庫、2002。単行本は2000)。

好きなのは「村上朝日堂」シリーズと、
特設サイトで読者の質問に答える
『そうだ、村上さんに聞いてみよう』シリーズ。
あと新潮社から出た「少年カフカ」(これも読者の質問に答える方式)。
引越の時はそれだけ残しました。

(1)赤本、2000年、朝日新聞社

(2)青本、2006年3月、朝日新聞社

(3)緑本、2006年11月、朝日新聞社

『少年カフカ』(新潮社、2003)

文章について書いているので、それをご紹介。

―★―★―
 ときどき「どうしたらうまい文章が書けますか?」
という質問を受けるのですが、僕の答はひとつだけです。
とにかく何度でもいいから読み直し、書き直すこと。
これしかありません。プロだってアマチュアだって、
これは同じことですね。
 書き直すときには、書き直しと書き直しのあいだに
しかるべき時間を置くといいです。更にいえば、
一回の書き直しのときに、それぞれのテーマを設定すること
(たとえば今度は全体の文章をできるだけ短くしてやろうとか、
今度はできるだけ長くしてやろうとか)。
(『スメルジャコフ対織田信長家臣団』朝日新聞社、2001年、
 p.15 <村上ラジオ25>より )
これは村上朝日堂のCD-ROM版。
―★―★―

以下はわたしの意見。
野球の守備をよくするために千本ノックを受けるのと同じ。
ある程度数をこなせるようになったら、
初めて自分のレベルがわかり、
目標が立てやすくなります。
漠然と「作文うまくなりたい」でうまくいくわけない。

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愛読していた雑誌あれこれ

2010年4月10日
Filed under: インタビュー,エッセイ,ジュンパ・ラヒリ,丸谷才一,向井敏,対談・鼎談・座談会など,小説,村上春樹,雑誌について — ぱぐ @ 15:49

8日から仕事が始まって、最初の週末を迎えました。
ちょっとくたびれています。
荒削りなメモの延長ですが、どうぞ♪

―☆―☆―
最近はネットの時間に移管した気がするけど、
前は愛読していた雑誌があった。

「週刊朝日」(朝日新聞社発行の週刊誌)
母方の伯母が取っていたので、遊びに行くと読んだ。
ポルノ路線(笑)に走る前の
渡辺淳一『化粧』(1982年、朝日新聞社。
のち新潮文庫、講談社文庫、新潮文庫)が好きだった。
司馬遼太郎「街道をゆく」はときどき読んで、
文庫本になったら買って読むことにしていた。
村上春樹の「村上朝日堂」は文庫になってから古本で。
小説は熱心な読者ではないが、CD-ROM版
(「夢のサーフシティ」「スメルジャコフ対織田信長家臣団」)
と「村上さんに聞いてみよう」シリーズ3冊を愛読している。

「図書」(岩波書店のPR誌。月刊)
両親が岩波書店好きだったので、実家では今でも取っている。
岩波茂雄が小さな出版社を始めたころに
丁稚さんから編集者に起用され、
茂雄亡き後は経営にも携わった小林勇(1903-1981)に
20代のころ、凝っていた。
「図書」創刊者の1人であり、あとがきを書いていたこと
を知って、当時の「図書」をいろいろ読んだ。
学者の随筆が好きだが、
ここで見つけた学者が多い気がする。
中野好夫(英米文学)、高宮利行(中世英文学、書誌学、デジタル書物学)、
千野栄一(チェコ語)ほか

「銀座百点」(銀座の老舗商店会が発行するタウン誌の先駆け)
加盟店でもらえるので、ときどき読んでいた。
銀座が粋だったころの匂いを残す雑誌。
書く人の顔ぶれが豪華で、読み応えあり。
今、銀座は大きく変わってしまっているけど、
その雰囲気は残っているんだろうか。
向田邦子『父の詫び状』は大学生になって文庫本で読んだのだが、
初出は「銀座百点」だったという。
小田島雄志・村松友視などの鼎談がおもしろかった。

「オール讀物」(文藝春秋発行の、名前の通り読みものを掲載する老舗月刊誌)
30代以降、ときどき立ち読みしたり買った。
平岩弓枝『御宿かわせみ』
丸谷才一のエッセイのシリーズ。
神谷美恵子の義父になったかもしれない野村胡堂の『銭形平次捕物控』
藤沢周平はオール讀物新人賞で作家デビュー。
好きな著者しか読まない傾向があるので、
ふだん知らない作家を読むきっかけになる。
松井今朝子もこれで知った。

「東京人」(「ニューヨーカー」をお手本に作られた雑誌。現在は月間。都市出版発行)
丸谷才一のジャーナリズム批判シリーズを愛読。
向井敏が書評同人だった。
森まゆみの「望郷酒場」が好きだった。
散歩する参考にしたり、落語や飲み食い特集を購入。

「考える人」(新潮社発行の季刊誌。文学、音楽などを特集して取りあげる)
丸谷才一のインタビューやジュンパ・ラヒリの初訳などが
あれば買う。
ユニクロが1社スポンサー。

……最後になりますが、
いちおうわたしも女の子だった時期がありまして(笑)、
女性向きの雑誌で読んだことがあるのは、
アンアン、ノンノ、モアあたりです。

ヴァンダールワタナベだったかな、占いのコーナーが
けっこう好きでした(調べてみたら、ルネ・ヴァン・ダール)

ノンノは月2回発行だったのが月刊誌になるとか。
一時期よりは読者が戻っているそうですが、さてどうなるのでしょう。

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野上弥生子が最後まで現役の作家だったわけ

2010年4月1日
Filed under: エッセイ,伝記・自伝,文章について,書評,松岡正剛,野上弥生子 — ぱぐ @ 04:21

というのを、この間から考えてます。

「野上弥生子」で検索した結果はここをクリックしてください(アマゾン)。

数え年なら100歳まで(!)、
現役の作家を貫き通した、
この明治・大正・昭和を見届けた女性作家(1885-1985)
が若いころから気になっています。

まず
本人の気力・眼力が
尋常なものじゃなかったのはたしかですが、

*いいものはいい、だめなものはだめ、とはっきり言うこと
*若い作家(ことに女性)のいいところを発見すると、
 自分もそこから学ぼうと考える柔軟性
*お勉強好き(笑)でもわかるように好奇心がいつまでもあった
*自分をネタにできるユーモアの持ち主だった

そして、作家として何よりよかったのは、
*自分のペースでものを書けたこと
でしょうね。

頼まれ原稿もエッセイなんかはあったと思いますが、
小説は自分のペースで悠々堂々、
一人山ごもりして書いていた
という。

書くこと=食べることじゃなかった、
という恵まれた環境でもあったわけですけど。

松岡正剛が「千夜千冊」第934夜で取りあげてる野上弥生子
がとてもいい。

読んだり書いたり考えたりするのが
好きな女性には、とても刺激になるはず。

よく切れるペーパーナイフみたいな
野上弥生子の文章は、
慣れてないと取っつきにくいかも知れませんが、
文章のお手本のひとつになると思います。

最近、初めての本格的な評伝
狩野美智子『野上弥生子とその時代 』
が出たそうで、興味あります。
読んでおもしろかったら、感想書くかもしれません。

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塩野七生でいちばん読んでる本

2010年3月28日
Filed under: エッセイ,塩野七生,映画,書評,芝居 — ぱぐ @ 07:15

塩野七生『人びとのかたち』(新潮文庫、1995、元本1993)

好きな著者については、
手に入る限りずるずる~と
なんでも読むのがわたしの主義です。

中学生の時『燃えよ剣』(新潮文庫)で
司馬遼太郎に出逢って以来、
その文章にまず惚れて、
大学生になってからかなー、
古本屋で文庫本になっているのを
かたっぱしから集めました。

まだ「街道をゆく」は週刊朝日
(しばらく読んでませんが、最近どうなのかな。
雑誌は全般売れてないそうですね)
に連載中だったので、
たまに立ち読みくらいはして、
単行本ではなく
文庫本になったものを手に入れる、と。

塩野七生は30代になってから読み始めたので、
遅い読者です。
いちおうわたしも女ですから(笑)、
女の人で波長の合う文章を読みたい、と
つねづね思っているところに、
率直・ユーモア・歴史を俯瞰から見ることができる、
というまさにぴったりの著者が塩野七生なのでした。

そうそう、切れ味のいい文章も好みです。

『ローマ人の物語』(新潮文庫)は、
オカネがなくなって続きが読めていませんが、
20代から関心を持ち続けている
神谷美恵子(1914-1979)のことを知るヒントとして、
キリスト教がローマ社会にどう定着していったのか、
非キリスト者である人から
解説してもらうのがわかりやすいので、
「キリスト教の勝利」を読むのを楽しみにしています。

で、実は塩野さんの本で
いちばん繰り返し読んでるのが
冒頭の本なのでした。

「映画鑑賞を読書と同列において
 私を育ててくれた
 今は亡き父と母に捧げる」

という献辞の通り、年季の入った映画鑑賞歴の持ち主が
映画をネタにあれこれ考えてエッセイを書いているので、
おもしろい。
今だったらブログを書いているような感じじゃないでしょうか。
考えるヒントがたくさんあります。

わたしはそれほど映画に入れ込んでいませんが、
本と同じくクラシックな映画が
若いころから好きだったので、
観ていなくても感覚としては
通じるところがあります。

いちばん好きなのは、
「優しい関係」。

  愛する人や親しい人々を傷つけることなしに、
  恋愛は成り立たないものであろうか。
  障害になるものすべてを轢き倒して進む馬車に
  似てがむしゃらに前進する恋愛だけが、真の恋
  だと思っている人が多い。他はすべて、妥協の
  産物だというのだ。

こういう書き出しで始まり、
『Same Time Next Year』(1978、アメリカ)
を紹介するのです。

いまアマゾンで検索したら輸入盤VHS
(DVDはないんですかねー?)が出てきたので
びっくりしましたが、そうか観られるんだ。
資金のめどがついたら購入に走るつもり。
字幕ないから英語を聴き取らなくては(笑)。

激動の1950年代から70年代のアメリカ社会
を背景にした、年に一回24時間だけ
逢瀬を繰り返す男女の話。
「来年も同じ時期に」という題名ですね。

日本では加藤健一・高畑淳子コンビの芝居が
ヒットしたと聞いていますが、わたしが
この本を読んで観たいな、と思った時にはもう
やってなかった。検索してみましたが、
DVDとかはないみたいですね。
芝居の脚本は日本語に訳されたものが
あるみたいなので、リンク張っておきます。

いま子育て中の同級生、富本牧子さんに、
「ぜひ観たいから芝居でやってくれないかなぁ」
と毎年、年賀状でお願いしているのですが、
やってくれるかなぁ。
何年先でもいいから、ホントに、やってほしい。

富本さんの二人芝居(「リタの教育」。有川博共演)を
観たことがあるんですが、
歳月が流れていく上にセリフの多い芝居で、
着替えと出入りが多くて大変そうでした。
*観た時の感想ありました。リンク先からたどってください。
これもそうなのかな。

今回は
本の紹介というより
思い出話ですね(^^;)。
こういう書き方ならいくらでも書けそうです(笑)。

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18世紀西欧文化の申し子

2010年3月21日
Filed under: 伝記・自伝,小説 — ぱぐ @ 14:50

池内紀<おさむ>『モーツァルト考』(講談社学術文庫、1996)

モーツァルト(1756-1791)の人物像っていうと、
映画「アマデウス」が印象に残っている人が多いのかな。
あれは確かに傑作ですけど(音楽の使い方もね)、
「年取ったサリエリが回想するモーツァルト」
ですからね。

秀才が天才に抱く嫉妬、
すごさはわかるけど自分はできないという引け目、
見方がかなり歪んでますから。

「モーツァルトってあんな下品な人だったんだ~」
で終わっちゃ、ものの見方が浅い。
それ、自分に引きつけて考えてるでしょう?
安心してどうしますよ(笑)。

親しい従姉妹に出した手紙などが残ったので、
お下品なところがあったのはよく知られていますが、
ここまで強調するんかい?
とわたしはちょっと不満でした。

天才的な創作者(モーツァルトの場合は音楽)は
自分の天分を発揮するために生涯を捧げる。
<作り出すものの価値がすばらしい>
ってことが何より大切で、
人物像は二の次三の次。

といいながら、時代の子としての
モーツァルトは気になる。

「アマデウス」を観る前から、
モーツァルトは
<人生を愉しんで生きた人>
だと思っていて、そこが好きでした。

彼の生きた時代は18世紀、
フランス革命以後、
西欧社会が二度も三度もひっくり返る前の、
ゆるやかな優雅さがあった。

英国の女性小説家、
ジェーン・オースティン(1775-1817)
もほぼ同じころですよね。

というわけで、
18世紀の西欧はどういう時代だったのか、
そしてモーツァルトが18世紀西欧文化の申し子
であることを教えてくれるのが、この本です。

池内紀はドイツ文学の学者だった人で、
現在は物書き業に精を出してます。
エッセイを山ほど書いてますし、
(読んでないけど)カフカやゲーテなど翻訳もありますね。
NHKーFM「日曜喫茶室」(はかま満緒司会)にもよく出ていた。
(そういえばあの時間帯、最近は松尾貴史の
「トーキング ウィズ 松尾堂」がほとんどでつまらないなー。)

読みやすい文章に定評がありますが、
この本では編集部相手に資料やメモを見ずに
語りおろしているのでお話を聴いているみたい
に読めます。

第一章 時代の申し子、時代の頂点
第二章 「小さな大人」の旅の日々
第三章 手紙の中の天才
第六章 死の一年

次の二章はビデオ鑑賞合宿で練り上げた
対話方式になっています。

第四章 ウィーンとフリーメイソン
第五章 オペラの魅惑

なお、同じ著者にモーツァルトの故郷を書いた
『ザルツブルグ』(ちくま文庫、1996。
元本は1988、音楽之友社より刊行)
という本が
あります。興味のある方は併せてどうぞ。

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開設記念に「徹子の部屋」で語る

2010年3月18日
Filed under: 「徹子の部屋」で語る,エッセイ,ジュンパ・ラヒリ,丸谷才一,向井敏,小説,文章について,書評,本が原作の映画,翻訳の文章と翻訳者について,若島正 — ぱぐ @ 15:00

♪ルールルルルル ルールルルルル ルールールール ルルッル…

徹子:みなさまこんにちは、徹子の部屋です。
   本日のお客様は、お小さいころから活字を読むのが大好きで、
   このたび本の紹介と感想のブログ「乱れ読み記」を開設され
   たぱぐさんです。
   きっかけやねらいをお訊きしたいと思います。

ぱぐ:こんにちは、この部屋には2回目の出演ですね。よろしくお
   願いします。

徹子:前回より顔色がよくなられたみたい。
   さて、今日のお召し物はグリーンと紺のチェック柄のフラン
   ネルシャツに、えんじ色のアーガイルセーター、グレーのパ
   ンツスタイル、黒いショーツブーツです。

ぱぐ:前回は少しよそ行きでしたが(笑)、今回は普段着でまいり
   ました。

徹子:パンツスタイルの方が、リラックスなさってる感じがします
   よ。

ぱぐ:自分を女だと意識したことがあまりなくって(笑)。10年
   も女子校に行ったんですが、中高の同級生に「おじさま」と
   いうあだ名を奉られたことがあります(笑)。

徹子:まぁ、「おじさま」!(爆)
   前から書いていらっしゃる「天衣無縫」というブログでも、
   <日記><食べたり呑んだり>の次に<読書>が多いそうで
   すが、改めて本のブログを作ろうと思われたのは?

ぱぐ:「天衣無縫」はまず、文章稽古のために作ったブログですの
   で、ネタは何でもありなんです。本のことも出てきますが、
   だいたいは日記の中でちらっと触れている程度。
   うちのダンナはパソコンソフトの開発をやっている技術者で、
   設定などはおまかせなんですが、前から「書評ブログを作っ
   てみたらどうなの?」と言われていたんですよ。

徹子:ご主人のお勧めということですか。

ぱぐ:直接はそうですね。
   書くのも好きなので、じゃあ思い切ってやってみようかな、
   と。書評だと大げさだから、本の紹介と感想のブログにしま
   した。

徹子:もともと書評を読むのがお好きだったそうですね。

ぱぐ:目についた本を買ったり借りたりすることもありますが、書
   評を読んで面白そうだと思った本は手帳にメモしておいて、
   手に入れることにしています。

徹子:特にお好きな書評はありますか?

ぱぐ:ひとつの字数がたっぷりあって、書評委員があまり変わらな
   い、毎日新聞の書評欄(今週の本棚)は毎週楽しみにしてます。
   
   個人名を挙げると、2002年に亡くなった<書評の名手>向井
   敏(さとし)さんや、40年も(!)書評を手がけておられる
   丸谷才一さん、それに英米文学専攻の学者で小説を読むのが
   大好きな若島正さんの書評は手に入る限り読んでます。

*若島正『殺しの時間―乱視読者のミステリ散歩―』(2006、バジリコ)

徹子:なぜか男の方ばかりですねえ。何か琴線に触れるところがお
   ありですか?

ぱぐ:司馬遼太郎や中島敦も好きだったりするので、男性的な?文
   章が好みなのかなぁ。
   女性でも幸田文とか向田邦子、最近の人なら米原万里など、
   歯切れのいい文章が好みです。

徹子:書評は文章の書き方のお手本にもなるとか。

ぱぐ:そうですね。いかに読者を読みたい気持にさせるか、文章の
   芸が見せどころです。
   「天衣無縫」を書くときの参考にもなっていると思いますよ。
   ネットでオープンに書いているということは、大げさに言え
   ば世界中の方が読む可能性があるっていうことですよね。

徹子:全世界相手のブログですか(笑)。

ぱぐ:ふだんはそこまで意識しないで、書きたいように書いてます
   けど(笑)。

徹子:ぱぐさんは新しい本にはあまり手が伸びないということです
   が、書評で知って読みはじめた本はありますか?

ぱぐ:インド系のアメリカ人女性作家、ジュンパ・ラヒリの短編集
   『停電の夜に』(新潮文庫)は、向井敏さんの書評<低声
   (こごえ)で語る人生のさまざま>で知ったんだと思います。
   旅のお供にも本は欠かせませんが、近江への一人旅で瀬田に
   泊まったとき、読むものがなくなって町の本屋に入ったんで
   すよ。さんざん迷ってから「そういえば、これ書評で見たなぁ」
   と思って買いました。

*向井敏『背たけにあわせて本を読む』(2002、文藝春秋)
*ジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』
 (小川高義・訳、2000、新潮文庫。米国での原著刊行は1999)

徹子:実際に読んでみていかがでした?

ぱぐ:シングルルームのバスタブに浸かりながら読んだのを今でも
   覚えていますが、みっけものをした気分でした。ラヒリの小
   説はごはんがおいしそうなんですけど、細部の描写が行き届
   いています。
   それからお気に入りになって、第2作の長編『その名にちな
   んで』(新潮文庫)、第3作の短編集『見知らぬ場所』(新
   潮クレストブックス)と今まで出たものはみんな読んでます。

*ジュンパ・ラヒリ『その名にちなんで』
 (小川高義・訳、2007、新潮文庫。米国での原著刊行は2003)

*ジュンパ・ラヒリ『見知らぬ場所』
 (小川高義・訳、2008、新潮クレストブックス。米国での原著刊行も2008)

徹子:『その名にちなんで』は映画もご覧になったとか。

ぱぐ:ミーラー・ナーイルという女性監督の作品です。本だと想像
   するしかない、カルカッタの風俗が映像でわかっておもしろ
   かったですね。

*映画DVD『その名にちなんで』(2006、米国。日本での公開は2007。DVD発売は2008)

   あと、ほんとうは原文でも読めるといいんですが、日本語以
   外は不得手なので、翻訳者の腕にも注意してます。へんな文
   章だと内容に関係なく腹が立ってきて、読めなくなるので。
   ラヒリの翻訳は小川高義さんという方が手掛けていらっしゃる
   んですが、とても読みやすい。

徹子:本の話になると、ぱぐさんの目が輝きますね(笑)。ほんとう
   にお好きなんだということがわかりました。

ぱぐ:丸谷才一さんが「文章の名手が大好きなものについて書けばよ
   い随筆集ができる」と書いていらっしゃるんですよ。
   文章についてはまだ修行中(笑)ですけど、もともと小説より
   はエッセイが好きなので、数をこなしていくうちに手応えを感
   じられたら、何よりです。

*丸谷才一『蝶々は誰からの手紙』(2008、マガジンハウス)

   あと、読者のみなさんと本についておしゃべりする場になるの
   も楽しみにしています。

徹子:どんなものができるのか楽しみにさせていただきます。
   今日はありがとうございました。

ぱぐ:こちらこそ、長々と失礼いたしました。

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