福岡・大分紀行(1999.2.5〜2.8)


(3)【由布院編(その1)】2/7(日)晴れ

7日の朝は、10時45分にひまわりさんが車で迎えに来てくれることになっていた。トトロはこの日で帰る。友だちが来られなくなったし、ひまわりさんも8日は仕事、ひなつさんも仕事の関係で7日と8日につきあってくれるだけだから、全日程を満喫したのはひまじんの私だけだ。
朝食はきのうと違ってレストラン。夏は庭でバーベキューができるらしい。このときもデジカメを忘れたので、写真なし。手前に開くようになっている2段重ねのお重に入っている。きのうも書いたが一人に一帖の海苔がつく。豪勢だが、それだけのことはある。ごはんはおかわり自由とのことだったが一杯でみんな食べてしまった。海苔の佃煮もあったがこれもおいしかった。白身の魚の西京漬けもおいしかった。

部屋に戻りトトロが持ってきたリブレットで、歌会の作者発表と探偵の結果発表を見る。電話回線はPHSである。そうそう、5日の夜にモツ鍋屋で歌会の部屋につないで実況中継をしたのだった。
プロレスラーのジャイアント馬場が亡くなったことが発表された2月1日、帰るコールをしてきたトトロに言ったら驚いていたが、朝の番組でその特集をやっていたのでトトロはずっと見ていた。私は部屋のベランダで地元の西日本新聞の朝刊を読む。サービスで部屋に配られたもの。天気がいいので庭の風景をデジカメに収める。
TVを見ているトトロを残し、先にフロントで会計を済ませる。時間があるので置いてある食べ物の雑誌をもらって読む。今日も結婚式がひとつあるらしい。それに「柳川青果組合」つまり八百屋さんの会合があるらしく、受付にひとがいた。

ひまわりさんはぎりぎりくらいに来た。JRの瀬高(せたか)駅に向かう。きのう食べるのを忘れた川下りせんべいは彼女がそのまま持って帰ったが、そのまま私たちにくれた。トトロはさっそく開けて食べる。私も食べた。ひまわりさんは歌会の結果をまだ見ていなかったので、後ろの席にいるトトロを忘れてあれこれ話題にする。電車の時間にぎりぎりだったのでけっこう飛ばしたが、ちょっと迷ったこともあって11:20の普通電車には間に合わなかった。私は久留米で乗り換えるのだが、余裕を持ってひとつ前の電車にしておいたので、由布院駅に迎えに来てくれることになっているひなつさんに伝えておいた特急には間に合う。

門司ゆきの快速電車に乗る。ひまわりさんとはここでお別れ。屈託のない笑顔はここでも健在。2月末に東京に来ることになっているので、またすぐ逢えるのだけど。そうそう、電車を待っているとき、前・和食の鉄人、道場六三郎の店のことを聞かれた。2月末に東京に行くときにサックスのバンドのメンバーで行きたいと思ってるのだという。勤めているとき赤坂の店に行ったことがあるので、その話をした。予約をした方がいいかもと言うのを忘れたような気がする。その方が確実だろう。

久留米までは10分足らず。トトロはこの電車で博多へ行き、帰路に就く。特急が来るまで時間が少しあった。黄色い一両だけで走る電車が面白いのでデジカメに収める。あとでひなつさんに聞いたら乗ってみたいとのこと。特急ゆふ3号というのに乗る。由布院に行くにはもっと早い時間の「ゆふいんの森号」というかっこいい特急もあったのだけど、トトロが、
「きみが早く起きられるはずがない」
と言うのでこっちにした。私の寝起きが悪いのは確かだから正しい選択だったかもしれない。今回はひとの車に乗せてもらうから遅刻するのは厳禁だし。

自由席は余裕があった。由布院までは1時間40分ほどかかる。うっかり寝て乗り過ごしたら大変だから、さっきもらった雑誌や持ってきた本を読む。こんな時にと思って持ってきた、アガサ・クリスティーの『春にして君を離れ』(ハヤカワノベルス)の原書版"Absent in the Spring"(Harper Collins)を読み始めたら、たちまち睡魔におそわれたので、角田文衛(つのだぶんえい)『平安の春』(講談社学術文庫)に切り替える。

由布院駅に着く。日曜日で帰るひとたちなのだろうか、乗ろうと待ちかまえているひとが多い。ひなつさんが改札口で待っていた。パソコン通信だとしょっちゅうやりとりしているが実際に逢うのは二度目。一度目はおととしの9月だった。真っ赤な上着と同色のマニキュアが印象に残っていたが、今日はヒョウ柄?の長めのコート。車は真っ赤なフェアレディZ。はっきりしている性格の車が好きなのだという。スポーツカーに乗るのは初めてではないが、車高が低い。屋根の一部が開くようになっている。この季節は寒いからもちろん開けないけど。
「スカーボロ」という車に乗って町を一周するつもりだったが、14:10のは朝ひなつさんが電話して聞いたら予約が一杯だったそうなので、あした乗ることにする。

町の中心部に行く。「亀の井別荘」という泊まれば3万円以上するすごい宿があるが、その中の「天井桟敷」という喫茶に行く。「亀の井別荘」というのは相当広い敷地で、宿は離れなんかになっているらしい。「天井桟敷」は洋式の建物を想像していたら古い民家だった。奧の座敷の方に入る。八角形?のテーブルのところに座る。庭が見えるがこの季節だから花はない。鳥が水浴びをしていた。ひなつさんおすすめの「モン・ユフ」、それにアイスティーを頼む。ひなつさんはブレンドコーヒー。面白い音楽がかかっていたがグレゴリアン聖歌だったらしい。「モン・ユフ」は「モンブラン」をもじって、由布岳をクリームチーズと生クリーム、レーズンでかたどったもの。クリームチーズが主だからこってりしている。トトロはクリームチーズが好きだから気に入るかもしれない。デジカメに収める。床の間に雪の結晶の絵が飾ってあったので近づいて見たら、雪の研究で知られた中谷宇吉郎(なかやうきちろう、故人)の絵だった。これもデジカメに収める。

途中に車を置いて、軽いお昼に「しげちゃん」というクレープ屋に行く。ここのおじさん(おじいさんに近いかな)が考えた和風包み焼きというのを食べるのである。焼きそばとかチョコレートなんかもあるが、高菜にする。高菜の漬け物を細かく切ったのがめいっぱい入っている。夫婦でやっていて、一度に一枚しか焼けないからお客が多いと並ぶらしい。トトロは並ぶのがきらいだから待ちきれないかも。お店の隣りにベンチがあったが私たちは立って食べる。思ったよりボリュームあり。

映画「となりのトトロ」のグッズを売っている店に寄る。大分に「ととろ」(字を忘れた)というところがあって、最近はひとが行くそうだからその関係かな?猫バスの看板があるのでいい年をしてひなつさんに写真を撮ってもらう。トトロも来れば面白かったのに。しっぽを引っ張ると前に動く水色のぬいぐるみがかわいいので買う。確か某会議室のひとがリュックにつけていた。あとポチ袋も。ストラップが欲しくてずっと探しているのだが、イメージと違うのしかなかったのでやめた。ひなつさんは真っ赤なハート型のペーパーウェイトを買う。またなんと「らしい」ものを選ぶこと!

車のところに戻り、すこし離れたステンドグラス美術館に行く。今回は車で回ったが、町中は道路が狭いので歩くか自転車が向いていると思う。美術館は教会も併設されていて結婚式もできるらしい。カトリックの学校に行っていたので縁がないわけではないが、なんか装飾過多という感じがする。もっとも私が行っていた学校にはステンドグラスはないけど。

教会の隣の建物が美術館の本館らしい。アンティークのばかりだが、輸入したっていうこと?こういうものって輸入できるのかな。特に感想なし。英国に行ったときに本物の教会の中で見た、あの迫力にはどうしたってかなわないな。飲み物付きの券を買ったので、見たあとに紅茶を飲む。ウェッジウッドの果物の絵がついたティーセットだ。ひなつさんの仕事の話とか歌会の話をする。

由布岳がきれいなので、展望台まで連れていってもらった。ひなつさんは冬の由布岳を今回の見せたいものの筆頭に挙げていたが、たしかに見事。デジカメに収める。この間たんぽぽさんが来たときは濃霧で見えなかったそうだから、私は運がいい。

宿の「トム・ソーヤ」に向かう。町の中心部からはすこし離れている。ここはひなつさんがよく知っているところで、前に友田さんとねねさんが来たときもここに泊まったそうだ。宿のひとが自分で組み立てたログハウス。ひなつさんは仕事があるので泊まれないが、コーヒーを飲んでいった。私は社会人になってからコーヒーを飲むようになった晩学?だが、ここのは濃くておいしい。

友だちが来られなくなったので私は二人部屋を一人で使う。ほかのお客さんは、カナダから来た年輩の夫婦が一組。夕飯も一緒だった。ご主人の出身が小岩だそうで、我孫子のことも知っていた。夕飯のあと、男性二人と女性一人の3人連れが来たが、宿のひとは男性3人だと思っていたようで一部屋しかないといい、女性は結局よその宿に泊まったらしい。夕飯には地鶏の燻製や豊後牛の角切りステーキが出た。なかなかおいしかった。

先日、歌会で話題に出た詩人・八木重吉の伝記(写真入りの薄い本)があったので、借りて読む。今の東葛飾高校、当時の東葛飾中学に勤めていたことを知って驚く。松戸・柏・我孫子あたりは東葛(とうかつ)地区というのである。当時の千代田村柏、今の柏市に住んでいたそうだ。今の柏市は30万人を超す大きな町だが、人口が増えたのはここ30年ばかりのこと、重吉が住んでいたころは小さな町だっただろう。
そうそう、今日(1999年2月12日)の新聞に重吉夫人、のち歌人の吉野秀雄と再婚した登美子さんの訃報が出ていたので書いておく。享年94歳。冥福をお祈りする。

(この項終わり)

(4) 【由布院編(その2)】2/8(月)
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この壁紙は<ステンシル絵本>の雪うさぎです。