<一日一首・一日一返歌>最終更新2001.8.25


注)Asahi-netパソコン通信会議室「創作のステージ/催事場」で、私の歌会未発表分の歌と、ひなつさんが書いてくれた返歌のやりとりです。掲載日は1998.12.23〜1999.1.3。日付にふさわしい歌を選ぶのが毎日楽しみでした。上段が【一日一首】下段が【一日一返歌】です。

12月23日
おみやげは何がいいかな?海の向こうからのメールはいつもの口調 
少しだけ切なくなって僕のこといつかどこかで思うときには


12月24日
ホテル街そのただ中に妻恋という名の社(やしろ)祈るひとあり
いつになくマジな横顔ねがうのが縁結びなら僕に気づいて

12月25日
想ふより想はれることの安らぎあのときあなたに逢へてよかつた
ゆったりとわたしを包む長い腕きみは日向の座椅子のようで

12月26日
ベンチでのふたりの距離が縮まらない横にいるのに前ばかり見て
いつもより赤いルージュをひいてみる戦に出向く兵士のように

12月27日
ありのまま受けとめてくれるきみだからパンツで歩く姿も許す
夜勤明け疲れて眠る髭面にキスする君の髭面なれば

12月28日
「映画なら銀座で見よう」意気込んだ君を忘れぬ「Shall we ダンス?」
資生堂パーラー前に午後1時ひさびさに履く白いパンプス

12月29日
 <美空ひばりへの追悼歌・伊藤君子"Skylark"を詠める>
ピアソラに艶(つや)を加えてこの国の歌の女王に捧げる挽歌

そこだけがひだまりである病室のカセットデッキでひばりが歌う

12月30日
ベランダで布団干しつつ昨晩の夢を見ている後朝(きぬぎぬ)の朝
吐く息を凍らせながら帰ってく君を見送りもうひと眠り

12月31日
想い出にしたくないからきみと観た「十二夜」の券は栞にするよ
頁繰れば制服姿の君がいる借りっぱなしの「かもめのジョナサン」

1月1日
本当は録つておきたいほどだからしばし味はふ電話の声を
留守録の再生ボタンを押すたびにリフレインする君のおやすみ

1月2日
靴下をかかと入れずに履くきみはミニ「殿中でござる」伸びるよ
抜け殻のような靴下の穴さえも君の爪先の存在証明

1月3日
おたがいに「きみ」とよびあうわれわれは達郎・まりやのようにありたし
日のあたる窓辺に置いた鉢植がもしも愛なら簡単なのに

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