2007/10/28 日曜日

太地喜和子の色気と道行文の魅力

Filed under: 未分類 — ぱぐ @ 10:21:28

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CSの「時代劇専門チャンネル」で「但馬屋のお夏」というのをやっていた。
太地喜和子主演、秋元松代脚本、和田勉演出。1986年NHKで放送したもの。これかどうか覚えていないけど、太地喜和子が近松原作の時代劇で主演したテレビ番組を観て、その色気にため息の出る思いをしたことがある。

どっちかっていうと色事系のことを書くのは苦手で、ブログでは避けていますが(笑)、太地喜和子の時代物は生の舞台で観ておきたかった、と後悔している。

現代劇だとなんかいやなんですけど(「失楽園」のテレビ版は最低だった)、時代劇だと型が決まっているし、心中に至る道のりが納得できるせいか安心して色事系を観ることができる。読む物もそうかなあ。

近松は文楽『曽根崎心中』を映画で撮ったものを高校生の時に学校で観ているのだけど、当時最高峰の名人だった吉田蓑助の人形遣いが、今でもすごかったなあと思います。それに近松のセリフはみごとなんです。有名な道行きの部分、

   この世の名残り 夜も名残り
   死ににゆく身をたとふれば
   あだしが原の道の霜
   一足ずつに消えてゆく
   夢の夢こそ あはれなれ

   あれ 数ふればあかつきの
   七つの時が六つなりて
   のこる一つが今生の
   鐘のひびきの聞きおさめ
   寂滅為楽とひびく也

これを声に出して読むと、ふるえるような気持ちになる。自殺とか心中は嫌いなのにもかかわらず、ですよ。これが詩心のない下手な現代語だったらこうはいかないでしょうね。

平家物語にもこういう道行きの部分があって、卒論で取り上げたときに目を通しているから、同じようなセリフ回しに惹かれるのかもしれない。

重衡東下り(しげひらあずまくだり)
 平重衡は清盛の息子で、武勇に優れ艶福家。興福寺と東大寺を焼き討ちし、あの巨大な東大寺大仏を溶かしてしまった。一ノ谷の戦いで捕虜となり、南都(今の奈良市のあたり)で斬られてしまう。重衡が捕虜となって送られるところが「重衡東下り」。平家物語の中でも特に名文と言われているところ。ここはぜひ、声に出して読んでみてください。

逢坂山をうち越えて、瀬田の長橋駒もとどろと踏みならし、雲雀(ひばり)のぼれる野路の里、滋賀の浦波春かけて、霞にくもる鏡山、比良(ひら)の高根を北にして、伊吹が岳(いぶきがたけ)も近づきぬ。心とまるとはなけれども、荒れてなかなかやさしきは、不破の関屋の板びさし。いかに鳴海の潮干潟、涙に袖はしをれつつ、かの在原のなにがしが「唐衣着つつなれにし」と詠じけん、三河の国八橋にもなりしかば、「蜘手にものを」とあはれなり。浜名の橋を過ぎければ、松の梢に風さえて、入江にさわぐ波の音。さらでも旅はものうきに、心をつくす夕まぐれ、池田の宿にぞ着き給ふ。

「但馬屋のお夏」では、いしだあゆみが別れた亭主(中村嘉津雄)に未練たらたらの女をやって、そのヒステリーぶりがこわかったです(笑)。あと、渡辺美佐子(お夏の母)が上手ですね。安心する。彼女の「化粧」っていう一人芝居を観たいと思ってたんだけど逃してしまった。残念。

松岡正剛の「千夜千冊」に「フォーカスな人たち」というのがあって、太地喜和子が女優に変身していくところが書いてあるのだけど、つきあった男がずらっと書いてあった。
三国連太郎、津阪匡章(秋野太作)=結婚相手だった、峰岸徹、田辺昭知、伊丹十三、石坂浩二、津川雅彦、中村勘九郎(今の勘三郎)。

三国とか秋野、勘九郎は知っていたけど、なんかこのメンバーを見て、好みがわかる気がした。色気があって知的な感じ。

着物がよく似合う下ぶくれの顔なんですね。おしろいもよく似合っているし。ああやっぱり生で観たかった。

2件のコメント

  1. 太地喜和子にそういう恋愛の変遷があったとは知らなかったけど
    これを見て男の趣味がいいと思った。
    お互いに高めあうような情熱的な恋愛をしたんだろうね。
    出会いも別れも芸の肥やしになったことは確かでしょう。
    彼女には女でもゾクッとくる色気がある。
    薄っぺらな色気でないところが最大の魅力。

    コメント by がな — 2007/10/29 月曜日 @ 8:20:33

  2. >がな

    男を見る目があったって感じがするよね。
    三国連太郎は秋野と結婚していた彼女を捨てちゃったらしい(ということは結婚してからも続いていたのか)。

    新劇出身でありながらそれまでの新劇女優にない、色っぽさを出せた人だと思います。山田五十鈴が目標だったらしく、「あたしは五十鈴の子供よ」なんて言ってたんだって。そう思いこみたかったということかな。

    コメント by ぱぐ@管理人 — 2007/10/29 月曜日 @ 9:19:59

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