神保町古本まつりと山形料理
古本まつりと、「樽平」の山形料理。
28日は休み。
神保町古本まつりの初日に行つた。初日は初めてかなあ。
前と違つて本に使ふお金もよくよく考へないといけないのだつた。
といふわけで、掘り出し物目当ての青空市はのぞく程度にし、東京堂書店に入る。一階の平台をぱつと見て、神保町の特集をしてゐる『東京人』と毎日新聞のムックを立ち読み。鹿島茂(仏文学者)と逢坂剛(作家)の神保町書斎派対談が面白い。本が多すぎて床が危ないからこれ以上増やすなと大家に注意されたとか(笑)。あと、定期的に本屋に行つて見て歩かないとだめだ、といふことも(今日は実感した)。
そのあと二階に行き、国文関係のところを見て歩く。今回は買ふとしたらそつちの方と決めてゐたので、買ふべきものかどうか、予算と合ふかどうか、ああでもないかうでもない、と時間を掛ける。ほんたうは新刊書店より国文の専門古本屋(日本書房とか八木書店)の方が、「らしい」本はそろつてるんだけど、研究書を読む余裕はないので、寝つ転がつて読んでもだいぢやうぶさうな二冊に決める。
(1)村山吉廣『評伝・中島敦 家学からの視点』(中央公論新社、2002年)
(2)久保田淳座談集『心あひの風 いま、古典を読む』(笠間書院、2004年)
(1)は漢文資料の解読がついてゐるので買った。中島敦は偏愛する作家の一人。
(2)は定家や新古今集など中世の和歌が専門の国文学者。俵万智、竹西寛子、丸谷才一などが対談相手。秋山虔(平安朝専攻の国文学者)と「ほんとうに古典が好きなら、職業にしない方がいい」と話してゐるのが印象に残る。
ほんたうは先日広告を見た著作選集三巻がほしかつたが専門書だけあつて一冊一万円近い。とても手が出せないので、きれいな装幀と中身をちよつと堪能したのみ。我孫子の図書館に入る可能性があると見たし。
詩歌のところは棚を見て歩いた。知りあいの歌人たちの本があるのを確認(ごめんなさい、買ふ余裕がない!)。
「短歌ヴァーサス」は創刊号だけ持つてるけど、そのあと出た4冊を立ち読みいたしました(同じく買ふ余裕ないのです、ごめんなさい)。歌集の出版について荻原裕幸さん(歌人、歌集を出すプロデューサーもしてゐる)と村井康司さん(編集者、ジャズ評論、俳人)が話してゐるのがおもしろかつた。
八木書店に寄つてから、はじめて古書会館に行く。ここはプロの古本屋が仕入れする会が開かれてゐるところで、素人も入れるらしい。入口で全部荷物を預ける。横文字の古い革製の本から雑本までいろいろあつたけど、北斎漫画の江戸時代刊本にはじめてさはつた。雰囲気を感じて満足、買はないで出る。
トトロと待ち合わせる約束をしたので電話したら小川町にゐた。神田に出ることにし、中央線で通勤してゐるときにいつも看板が気になつてゐた「樽平」に入る。実はこの名前は子どもの時に知つてゐた。週刊朝日の「わたしの好きなこの店」とかいふ題名の別冊に載つてたのだ。推薦者は覚えてないけど。
「樽平」は山形は置賜<おきたま>郡の酒である。酒造元が銀座でやつてゐる同名の店が有名。居酒屋について書いてゐる太田和彦(広告デザイナー)は、資生堂に勤めてゐたとき、まずここに連れて行つてもらつたといふ。
もうひとつの銘酒「住吉」を燗酒で頼み、芋煮、「もつてのほか」といふ食用菊のおろし和え、このわた、玉こんにやく、鶏の唐揚げなどをつまむ。
汁物は要らないとトトロが言つたのでむきそば汁は頼まなかったが、あと山形名物はだいたい食べたんぢやないかな。こんにやくはあんまり好まないけど、玉こんにやくは気に入つたとのこと。わたしは山寺のふもとで買つて歩きながら食べたことがある。
このわたはちょうどこのあいだ、うちで話題にしていたので頼んでみた。豆皿にうずらの卵を落としてある。少量でもおいしかつた、さすが珍味。なまこの内臓の塩漬けだつたかしら。向田邦子が好物にしてゐた父の死後、うつかりお店で頼んでしまつたといふ話を書いてゐる。
最近は外で呑む以外にうちで晩酌もするけど、ちつとも強くならない。一合頼むと最後の方はトトロに呑んでもらふくらゐ。ま、お金のことを考へるとそのくらゐでいいけど(笑)。