人となりを知るということ
伝記が好きで、わりと読んできたと思うけど、
*経歴や家庭環境、あるいは時代背景を知ることは大事だけど、人となりを知るためのヒントに過ぎない。
ということを感じる。
神谷美恵子というと、語学がたくさん使えて、ハンセン病に献身し、今の皇后が皇太子妃時代に話し相手になり、たくさんの精神医学の論文を書いた。医学博士。著書『生きがいについて』『こころの旅』で知られる。
というのが、人物辞典に書かれるときのいちばん簡単な書き方だろうか。
*周囲からどんな風に見られていたか
*交友関係。影響を与えた人物
も参考にはなる。交友関係だけでもかなり濃くて広いので、調べるのが大変。
ただし、神谷美恵子は周囲から見られている自分と、本人が自覚している自分とのギャップを強く感じていたらしい。もともと内気な性格だったのが、いろいろな事情で才能を授かり、世間の注目を浴びることになった。
というわけで、本音を知るには日記と親友への手紙がいちばん参考になる。
だめな伝記は書き手が自分の理想像に当てはめてしまっていて、本人に寄り添っていない。
和泉式部のことを知りたいと思ってちょっと調べたときに、竹西寛子がこんなことを書いていた。
和泉式部は当時の女としてもかなり奔放と見られていて、道長は「浮かれ女」とからかったそうだし、「今度生まれてくる子の父親はいったい誰なんですか」という歌を読みかけた歌人もいる(「えんま様にでもお訊きしましょうか」と気の利いた答えを返した)。
竹西寛子曰く、周囲からの評判はともかく、本人を知るには、その残された言葉(和泉式部の場合、歌と日記)がいちばんなのだ。
本人のことばを生かして、神谷美恵子の人物像を描けたら、と思っている。かなりむずかしいですけど。ついに書かれることがなかった小説の構想も参考になるかなあ。
いちばんこまるのは、
*ことばがいくつもできたこと
*宗教感覚
で、ことばの問題は帰国子女の同級生に助けてもらおう。
宗教感覚は斎宮・斎院 について興味を持ったときにもかなりこまった。山中智恵子(幻想的な詠み口が特徴の歌人)みたいなちょっと浮世離れしている人にはぴたっとくるのかもしれないが、わたしは神社やお寺でお参りするのがせいぜいのところなので。山中智恵子が斎宮について書いた本はまだ手元に持っているけど、あれを読むのはかなり苦痛で、うっちゃらかしてある。
わたしが進学した大学はカソリックで、いちどクリスマスミサに参加してみたが、あんまり印象に残っていません。
うーん。社会と宗教の関係ということでは、塩野七生の『ローマ人の物語』(新潮社)のうち、「キリスト教の勝利」が参考になるかなと思って、読むのを楽しみにしている。文庫本はまだ衰退状態の前のところまでなので。