自作秀歌選
誘われてパソコン通信の歌会に参加したのは、10年前。
古今和歌集を読むのは好きだったから、自分でもなんとかしてそういう匂いのする歌を詠めたらいいな、と思ったのだが、どうも詩心や飛躍が足りないらしく、歌会が自然消滅したあとは、強いて作ろうとは思わなかった。前から思っていたのだけど、改めて自分は散文向きだと思い、文章力向上をめざす。
というわけで、人様にお見せするほどのものはごく少数。
今回、久しぶりに読み返してなつかしかったので、自分で気に入っているのを選んでみました。仮名使いなどは多少手直ししてあります。
……
*お題「叫び」/出産シーンでテレビを消した家人を詠める
僕はやだ立ち会い拒むあなたにも叫びのうちに生まれた朝がある
*お題「心地よい時間」
逢ひ見てののちの心がつのるまま 二人で年をとれたらいいね
*「家内が」と電話で父が言つてゐる君はわたしをどう言ふのだらう
*なりわたるいかづちのねはあめつちにふたりのつみをつげるがごとく
*お題「遙かなる思い」
いにしへの哀しい恋が身に沁みて和泉式部の挽歌そらんじる
*お題「数字」/高校の古典の時間に聞いた話を詠める
万葉の番号書いて愛告げたひとの好める歌を知りたし
*残り香をいとほしみつつかへりゆく逢瀬かなへた大寒の夜
*露草が濡れてゐる君を想ふと便箋の隅に書かれてゐた
*お題「忍ぶ恋」
かたはらにゐるひとありてぬばたまのきみがすぐせる夜をおもへり
*斎宮を詠める
定まりて遠き地にある幾年(いくとせ)は面影のみを連れになしてむ
*「さ」ではじまる歌、「さしすせそ」を折句によめる
さりながらしるひともなくすぎさりしせつなわすれずそはかのひとか